薬膳の考え方④~食はどのようにからだに作用するか?
食べ物がどのようにからだに作用するかについては、食材毎の「味」と「性質」を知る必要があります。
味は「五味」といって5種類に分類され、性質は「四性」といって4種類(正確には5種類)に分けられます。
食べ物が五臓に働きかけていると説明しましたが(薬膳の考え方①~季節と体質で食事を考える)、今回は、五臓に働きかけている食材の特徴「五味」と「四性」についてお話ししたいと思います。
食の「五味」
食の特徴をあらわす代表的な分類が「五味」です。食材の味によって、酸・苦・甘・辛・鹹の5つに分類しています。
それぞれが「五臓」と深いかかわりがあり、その働きを助けています。
酸
五臓の「肝」に作用し、その働きを助けます。酸味の働きを「酸収」という言葉で表しますが、各器官や組織を収斂させる(ひきしめる)働きがあり、汗をかき過ぎないようにする、咳を抑える、慢性の下痢や尿洩れなどを防ぐ、といった作用を持ちます。
摂り過ぎると、水分の発散が妨げられることにつながります。
酸の食材:レモン、トマト、梅、アンズ、キウイなど
苦
五臓の「心」に作用します。苦味の働きは「苦降」と表され、高まり過ぎたものを下げる働きがあります。例えば、身体の中の湿気を取ったり、熱や火照りをさまし、湿疹や暑気あたりをとる働きがあります。
摂り過ぎると胃腸を冷やし、お腹を下しやすくなります。
苦の食材:ゴーヤ、ごぼう、セリ、緑茶など
甘
五臓の「脾」に作用します。その働きは「甘補」と表現され、足りないものや失ったものを補う働きとなります。例えば、身体の衰えを補い、疲れを癒すとともに、緊張をゆるめて痛みを取り、気と血を充実させるといったものです。
摂り過ぎると脂肪となり、蓄積されて肥満になりやすくなります。
甘の食材:穀類(米、ハト麦など)、イモ類、豆類、かぼちゃ、とうもろこしなど
辛
五臓の「肺」に作用します。その働き方は「辛散」と表され、たまったものを発散させる働きをします。例えば、発汗を促したりするのも「辛」の働きで、気と血の巡りを良くしてくれます。
摂り過ぎると、体内の陽気や汗を発散しすぎて、皮膚や気道、消化管が乾燥して荒れることにもなります。
辛の食材:長ネギ、タマネギ、ニンニク、ショウガ、ニラ、大葉、など
鹹
五臓の「腎」に作用します。その働きは「鹹軟」と表され、硬いものを柔らかくしたり、散らす働きがあります。例えば、身体の中のしこりを柔らかくしたり、便秘の解消など。
摂り過ぎると、胃腸の働きを弱め、渇きを起こし、血や水の流れを停滞させてしまいます。
鹹の食材:海藻類、魚介類、しょうゆ、みそ、など
食の性質「四性」
食材の性質は、からだを温めたり冷やしたりする働きのことで、寒・涼・温・熱の4つであらわされ、「四性」といわれます。寒涼と温熱どちらにも属さない「平性」があるため、正確には5種類に分類されます。
暑い季節やのぼせやすい人は、涼や寒の食品で調節し、熱や温の食品を控えめにすると良いですね。逆に寒い季節や冷え性の人は、温や熱の食品をとるようにすると良いでしょう。
温・熱
からだを温める性質で、寒性の病証に適用されます。からだの陽を補い、気血の巡りを良くして冷えを取り去るとともに、代謝を活発にします。涼より寒の方が強く作用します。
寒い季節・地域に採れる作物に多い傾向があります。
効果:補益、滋陰、養血、袪寒、助陽、填精など
寒・涼
からだを冷ます性質で、熱性の病証に適用されます。血や水を補ってからだの余分な熱を冷まし、感情の高ぶりなども鎮めてくれます。涼よりも寒の方が強く作用します。
熱い季節・地域に採れる作物に多い傾向にあります。
効果:解表、清熱、瀉火、涼血、解毒、利水、袪風、燥湿など
平性
寒涼にも温熱にも属さない食材で、食物の中でもっとも多いのが平性です。(全食物の70%が平性)
寒熱の偏りがないので、寒涼または温熱性病証、健常体質、どのタイプの人にも使えます。
加熱調理により寒涼性や温性の食物が平性に近づくものもあります。
まとめ
それぞれの食材がからだにどのように作用するかについて、「五味」と「四性」からお話ししてきました。
五味は食材の味ごと効果とどの臓器に働くかを表し、四性はからだを温めたり冷やしたりする働きをあらわしています。
薬膳では、摂るべき食べ物を決めるときは、その人が「熱タイプ」か「寒タイプ」かを最初に見ます。人間のからだは常に熱を作りだしていますが、熱タイプか寒タイプかは、その産出量の過少で判断します。体で熱を作りだす量が必要量よりも多ければ熱タイプ、少なければ寒タイプになります。
寒涼性の食材は、潤いが不足し、体に熱がこもっている人が食べるのに適しています。夏は暑さでからだに熱が溜まりやすいので、熱タイプの人は積極的に摂ると良いでしょう。
逆に、寒タイプが今の旬である寒涼性の野菜を食べるときは、加熱したり、温熱性の食品(ニンニクなど)を組み合わせて食べるのが適しています。
このブログのレシピページでは、使用する食材ごとに「性味」として、その食材の五味と四性を記載しています。ご自身の体調や季節に合わせて参考にしてみてください。
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